「IT国家戦略」の対応について 平成13年3月12日

平成13年第1回定例会一般質問

「IT国家戦略」に対する狭山市の対応について

総論

ちょうど、昨年の3月議会に於いて私は、IT革命に関連し質問をさせていただきました。それから1年がたち、政府によって「IT国家戦略」が発表され、いよいよ本格的な、IT革命の黎明期を迎えようとしています。

私は、かかる状況の中で、特に地方自治体として狭山市がいかなる問題意識を持ってこの時代の変革期に臨み全庁一丸となって課題を達成していくのか、いくつかの点についてご指摘を交え質問をさせていただきたいと思います。


まづはじめに、昨年と状況の全く違う点、すなわち「IT国家戦略」の発表された現時点に於いて、我が狭山市の執行部は、いかなるお考えを持っているのでしょうか、企画総務部長にお尋ねいたします。


「IT国家戦略」では、IT革命の歴史的意義として、「18世紀に英国で始まった産業革命に匹敵する影響を社会に及ぼそうとしている」とし、「ITの進歩は、情報流通の費用と時間を劇的に低下させ、密度の高い情報のやり取りを容易にすることによって、人と人との関係、人と社会との関係を一変させ、その結果世界は知識の相互連鎖的な進化によって高度な付加価値が生み出される知識創発社会に移行する。」と述べています。

さらにその序論に於いては「そのような知識創発社会の実現に向けて、既存の制度、慣行、権益に縛られず、早急に革新的かつ現実的な対応を行わなければならない」とし「5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す」と述べていますが、狭山市の執行部は、このことについてどのように受け止めているのかお尋ねしたいと思います。

すなわち市行政に於ける知識創発とは何か、そして狭山市に於ける革新的現実的対応とはどのようなことなのかお考えをお聞かせいただきたいと思います。

また、昨年の一般質問に対する回答の中で、地域の総合的なネットワークの形成についてその拠点形成も含め鋭意検討して行くとの答弁をいただきましたが、その検討結果を踏まえてご答弁願います。


私は、このIT革命のもつ意味は、人類にとって計り知れない意義がある、と考えるものの1人でありますが、特に国民生活、市民生活にとって一番身近な地方自治体がこの技術革新を、最大限活用して行く中で、市民の福利厚生と社会の発展に対する意味は大きいと考えます。

そのような意味に於いて、狭山市の積極的な取り組みを求めるものでありますが、その事にあたっていくつかの点について論点を提起いたします。

まず第一に、知識創発社会の一番基本的な問題、「IT国家戦略」の中の表現を用いるならば、「知識の相互連鎖的な進化」について、狭山市がそのような時代の幕開けのために是非とも意識的に準備していただきたいと言うことであります。

私は、私的な勉強会の中で、IT革命の時代、何が一番重要なのか議論してまいりました。その中で、もっとも重要であると見いだしたことは、行政が率先して、市民との協力の形を、すなわち行政と民間の連携と協動のネットワークを積極的に作りだしていくと言うことでありました。

このことは、近い将来いかなる情報装置が支配的になったとしても基本的に、その自治体のあるいはその自治体のなし得る市民サービスの質を規定するもっとも重要な問題だと思います。

市行政のあらゆる分野での系統的協力、横断的協力と民間を巻き込んだ、さまざまなネットワークの形成が必要と考えますが、いかがでしょうか。


さらに、第2点目として有効な中身の濃いネットワークを形成していく基本は、行政情報の積極的な開示にあると考えます。

既に狭山市には情報公開条例が存在していますが、基本的には、市民との有効な連携を形成していくために行政事務内容の積極的な開示は不可欠と考えます。情報公開条例の、申請、審査、開示と言った発想ではなく。 行政が市民の力を、より積極的に取り入れ理解と共感を求めるために、さまざまな政策課題の啓発、基本的例規類集の開示、審議会の議事録の開示など広く市民に意見を求める体制作りなど行政情報に関する原則公開に基づいた、市民的理解と協力の形成が必要と考えます。

また一方で個人情報の保護の仕組みと執行部としての議決案件・未決案件などの公開非公開の区別と考え方の整理をお願いしたいと思います。


さらに3点目として、IT国家戦略の中で政府自身は目的化していることでありますが、行政事務の簡略化・スリム化の為の視点であります。

未だIT人口が国民の30%程度の現時点に於いてはすべてをIT行政にとって変えることは出来ません。現時点では情報技術の導入が一時的な業務内容の複雑化を発生させるかもしれません。

そのような、過渡的な状況を認識しつつ、あらゆる角度からの行政改革としての視点を持って行政事務の見直しをしていかなければなりません。

さらにすすんでIT化を業務に適正に用いることによって、アウトソーシングの活用や、NPOなどの市民ネットワークとの協動などによる、新たな行財政改革の切り口も可能となります。これらの視点をふまえ総論としてお答えいただきたいと思います。


各論

先ほど申し上げたとおり、黎明期としてのIT革命をきちんと捉まえて現時点での市としての可能的取り組みは何か、既に始まったIT技術の可能的活用は何か、情報格差をいかに克服するのか、等の基本的視点に基づき各論についてそれぞれ質問をさせていただきます。


1、狭山市のHPについて

まず狭山市のホームページについてです。狭山市のホームページは、特質ある内容もあり、他市に比べても充実している点が多いところと思いますが、やはりホームページの初期的な役割である、紹介内容が主なコンテンツといえます。

私は、先に述べたような視点と、「IT国家戦略」で掲げられている、2002年までに電子商取引の確立、

2003年までに電子政府の実現と言うきわめて短期間での状況の変化をふまえて、市民の日常に役立つホームページとは何か早急に検討し、可能的移行を出来るだけ早く行っていただきたいと思います。

端的に言えば、市の全部局各課のホームページを作成し現在狭山市が行えていることは何かを明らかにすること、さらに各部局ごとの当面の課題は何か市民に啓発する事も必要と考えます。

象徴的には、市長のコメントは是非とも短期間で更新していただきたい。出来れば週に一度、少なくとも月に一度は更新していただきたいと思います。


2,各課のメールアドレスの公開について

また2つ目として、各課ごとのメールアドレスを是非とも市民に公開していただきたいと思います。

電子メールは、インターネットを通じ24時間開放されていますので、日常 他市他都・県へ働きに出ている圧倒的な人数の方々と市行政を結ぶ窓口になります。

また、電子メールは必要な時に開封し読むことが出来ますので電話と違い不在時でも届けることが出来ます。

電子メールを活用することによって市民からの問い合わせや苦情、相談や情報提供などネット上の窓口を構築することによって、これまでと違った市民層への働きかけや理解と協力を得る道が開けます。

市民と電子メールで対話の出来る体制を構築すれば、これまでの窓口業務の必要以上の対応は減りますし、又電子メールは文書によるやり取りなので苦情なども冷静に対処できると思います。

さらに電子メールは読み込んだ時点で、ログとしてその内容を記録保存されますので、受付日、受付時間、受付部局、担当者、回答内容などそのままでも窓口記録として扱うことができるのではないでしょうか。

このような利点を考えたときに是非ともアドレスの開放をお願いしたいと思います。尚このことは、私の知っているすべてのネットユーザーの共通の要望であります。


これらのことに関連して市の現状について先に市が行った庁内のアンケート結果によりますと、

職員数1300名の内

インターネットを閲覧ソフトで開示出来る人数は

621名 47.8%

メールを読むことの出来る人数は

667名 51.3%

メールの新規作成の出来る人数は

453名 34.8%

ホームページの文書内容程度の書き換えの出来る人は

63名 4.8%

ホームページの作成は

38名 2.9%

という結果でありました。

現状としては、まずまずのネット人口と言えますが。2年後までに電子政府が樹立されると言う事からすれば、職員はそのとき既に、このような基本的操作について教える側の役割を負うことになります。是非ともメールの新規作成やホームページの文書内容の書き換え程度までは、90%以上の職員がストレスなく行えるように情報リテラシーの向上を図っていただきたいと考えます。


さらに私がネットユーザーに行ったアンケートによると市民が市政について自由に書き込める情報掲示板が欲しいと言う提案を受けました。

市政についてさまざまな課題を市民が交互に意見交換しアイデアを施策にしていく仕組みが出来れば、まさしく狭山市政に於ける「知識創発」と言えますが、電子掲示板というと管理上の問題も出てくると思います。このようなことは可能でしょうか。お考えをお聞かせください。


3,許認可事務のデジタル化の目標年度

3つ目として、既に来年度行われることが示されました、例規類集のデジタル化に関連し検討されていると思いますが、許認可事務に関わる申請書類のネット化について、どの程度のことをいつまで行えるのでしょうか。現時点での考え方と目標をお聞かせいただきたいと思います。

「IT国家戦略」では、平成15年までに、全国の自治体を超高速回線が結び、全国どこでも住民票が受け取れる電子行政が作られる、とされていますが、情報処理の仕組み、アプリケーションやプログラムが国のシステムによって左右される事も考えられます。

しかし既にIPV6標準、インターネット対応型であることは明かでありますし、既存のHTMLファイルやCGI、ジャバなどのインターネット技術との互換性は保証されているはずですから。狭山市としては国がすべてを準備する事を待つばかりではなく、出来ることを見極め、やれることをいち早く行っていただきたいと思います。


*情報格差と公民館の予約システムへの対処

ここで、狭山市に於ける情報格差の問題について特に公民館と公共施設予約システムについて、取り上げたいと思います。現在、昨年稼働した公共施設予約システムによって情報弱者、お年寄りにとって予約が出来づらくなったと言う弊害が出ています。システムの使い勝手も多少問題があります。

今後の活用について適切な対応が求められていますが、特に公民館における情報弱者への対策は、登録団体として先方を把握できているのですから、13年度行われるIT講習会の場で紹介するなど、使い方の徹底をさらに図り、またご家族などの協力者を促すなどして情報格差による弊害を全く無くすか、又はいっそのこと高齢者の利用頻度の高い公民館については一時的な使用の休止を考えるか、利用者の立場に立った過渡的な対応を求めたいと思いますがお考えはいかがでしょうか。

4,障害者の就労支援につて出来ること

4つ目として、障害者の就労支援に関し福祉部長にIT技術の活用についてご提案したいと思います。既に障害者の就労支援については、障害者就労センターを他市の例なども参考にしながら検討されていいることと存じますが、まづ第一に、狭山市のホームページを活用し是非とも障害者の就労についての市民と企業に対する啓発を行っていただきたいと思います。次に障害者就労センターを開設する準備段階として、ジョブコーチなど支援者の育成、研修方法の案内など支援者のネットワーク作りに向けたきっかけを作っていただきたいと思います。

また、別の視点として、障害者のパソコンを使った就労を支援している団体も存在しています。市のホームページで是非ともそのような団体とリンクを張り現時点で出来る事を、模索していただきたいと思います。

障害者の就労については、労働基準法の改正などもあり、多少ではありますが枠は広がっていますが、社会的な理解と共感の必要な課題です。IT革命の時代は、SOHOなど障害者にとって就労機会の広がる時代でもありますし、さまざまな観点での支援組織も設立されつつあります。まずそのような情報の聴取と開示を徹底して行っていただきたいと思います。


5,地域産業の育成について

5つ目として、地域産業育成の施策について市民部長に質問します。昨年狭山市は、高度情報化産業の重点育成地域として、神奈川県の相模原市、東京都の八王子市、と並んで埼玉県での拠点地域として経済産業省関東経済産業局に指定されたと聞いていますが、現在関東経済産業局では、さまざまな支援施策を用意し又は支援団体を紹介しています。

例えば、先進的情報システム導入のための調査としてこれは、財団法人ニュウメディア開発協会が行うものですが、内容は、先進的な情報システムを導入する意欲のある地域がシステムを導入するにあたっての問題点について、また利用効果影響等について検討などのための支援施策です。対象は自治体又は第3セクターなどで、支援額は500万円 補助率は100%です。

また先進的情報通信システムモデル都市構築事業として、国の支援策ですが、自治体を対象に、行政、教育、医療、防災など複合的機能を持った先進的な情報通信システムの整備に取り組み、個性的自立的な地域作りの開発実験に50%の国庫補助がつきます。

また、地域振興活性化事業として

商工会議所を対象に小規模事業所の抱える技術的課題、地域経済の活性化を図るイベント事業などに500万円国庫補助がつきます。

このようにさまざまな補助事業が、関東経済産業局扱いだけでも、10数件あるわけですが、是非とも狭山市として積極的に取り入れていただきたいと考えます。市民部長のお考えはいかがでしょうか。


6,火災指令の消防団への携帯電話メールの活用

さて、3月4日NTTのiモード利用者が2000万人を突破したと報道されました。ezWEB Jスカイなど他社形式を加えるとさらにそれを上回ると思われます。昨年私が質問した時は各社合わせて約500万人でしたからたったの1年間で4倍から5倍に急増したことになります。

6つ目として、消防長にお尋ねします。現在火災等の災害が発生した際、私たち消防団員は、市の消防無線を特別な受信機で傍受するか、防災サイレンの鳴るのを待って出動するか、本署の緊急車両のサイレンを聞いて、火災案内に問い合わせるかして現況を確認しています。しかし無線機を持っていない大多数の消防団員が防災サイレンを待って出動した場合、現場への到着出来る時間は決して早くはありません。消防車のサイレンを聞き火災案内に電話をしても電話が殺到しいつも話し中です。一刻を争う時に消防団員は判断に非常に困っています。

先に述べたiモードなど電子メール対応型の携帯電話を用いれば、本署から多くの消防団員に対し災害発生場所、現況など一瞬にして一斉同報する事も可能です。

大規模災害時、通常回線が不通の場合おも想定し是非とも消防団員の携帯電話メールアドレスを事前に把握し、メーリングリストを作成していただきたいと考えます。

さらにそのメーリングリストを活用し先ほど申し上げたように火災発生時に携帯電話メールで現況を一斉同報していただければ団員の緊急時のとまどいは解消するのですがいかがでしょうか。

このように現時点に於いても、通常のパソコンと、団員の所有する携帯電話を活用することにより、NTTのポケベルによる消防団用通報システムなど高価なシステムを導入のではなく。やる気さえあれば、すぐにでもお金を掛けずに、現状以上の効果を作り出すことが出来ると思います。


7,電子行政についての市民を交えた検討会について

最後に、私がただいま申し上げたことは、狭山市が地方自治体として行える電子行政の形のほんの一部でしかないと思います。

今後はもっとさまざまなIT関連の意見要望が考えられます。平成15年、本格的な電子行政の始まるの前に狭山市としてやるべき事は何か、出来ることは何なのか是非とも市民を巻き込み検討会を開催していただきたいと思います。狭山市には情報機器になれている青年団体も複数存在しますし、また情報技術に精通した市民組織も存在しています。

そのような市民団体も巻き込みながら検討を重ね市民にとって有意義な電子行政を志向していただきたいと考えますが、執行部のお考えはいかがでしょうか。


以上で私の一回目の質問を終わります。ありがとうございました。