さやまの特定外来生物

生物多様性と特定外来生物について

生物の多様性を維持するために、地球規模で取り組むことを約束したのが、生物多様性条約だ。日本もこれを批准し、2005年6月1日から(通称)外来生物法を施行している。その理念は「地球上には様々な環境に適合した生物がそれぞれ独自の進化を遂げて棲息している。これをむやみに人の手によって移動し、繁殖させると、地域在来の生物が絶滅する恐れがある。そのため地球規模で種を護り、移入種の移動を制限することで、種を保護し絶滅の危機を食い止めていく」と言うものだ。

狭山市でも河川区域を中心に下記の様な特定外来生物の繁殖が確認されている。2000年狭山市内の入間川にコクチバス(写真上)が発見された。それ以来、入間川では、在来種を復元し、特定外来種を駆除してきた。また学校等で生物多様性を学習啓発し、行政へは法、規則の整備を働きかけてきた。だがしかしこの問題に取り組む中で、今日的な課題も現れてきている。

植物 帰化植物の問題 特に狭山市周辺は、アメリカの駐留軍(旧ジョンソン基地)があることもあり、戦後直後から国内有数帰化植物のメッカだ。オオキンケイギク、アレチウリ(写真右)、近年ではナガミヒナゲシなど侵略的外来種はもとより、一面、セイタカアワダチソウ、マツヨイグサなどの

帰化植物も何処よりも早く広範に繁殖し既に慣れ親しまれている植物もある。後者もまた侵略的、支配的でありその区別の一線はいかにあるべきか。

昆虫 放蝶問題 関東近郊は趣味嗜好によって昆虫の自家飼育も盛んだ。特に近年問題なのは、愛好家による放蝶がある。「自宅周辺でも、美しい蝶を自然の中で観察できたらどんなに素晴らしいことだろう」との考えなのか、アカボシゴマダラ(写真左下)(要注意外来生物)ホソオチョウ(要注意外来生物)など数種類の蝶が定着した。それにより繁殖、種の保全、生息域に悪影響を得ている在来種がある。

外来種の放蝶は不法不当だが、明確な規定がないかぎり、今後もっと増えることが予想される。これをいかに止めるか、そして定着した種をどうしていくのか、在来種への影響調査をどう組み立て、いかに保全するのか。昆虫は特に数的に桁が違い流布されたものを取り除くことは不可能に近い。

環境学習(写真右下)と、排外主義のとの混同の問題 生物多様性の保全の問題は、確かに在来種保護と外来種の防除に直結しているが、これを、レイシチズムと混同する議論がある。大自然の中で生物の進化が遂げられていること、

地域地域の在来の生物がそこに棲息する訳を学び 地域の在来生物を保全する事業と、レイシズムとは全く別物だ。そもそも人種は、生物学的に一つの種であり、文化的な違いはあれどコクチバスと野鯉ほどの違いは全く無い。 学校教育で、環境学習を扱う場合そのことも恐れずにきちんと教える必要がある。いかにも子どもらしい勘違いだが、生物学的な考察抜きにただ「外来種を駆除しよう」とだけ講師側が発言することは危険だ。

何故ならブラックバスをことさら容認するある生物学者が、生物多様性と排外主義=レイシズムを混同させ。ネットや出版を通じ、生物多様性の地道な活動を「排外主義」とレッテル張りをして妨害しているからだ。これはブラックバス利権集団による、行政に対する牽制と思われる。経緯を見ると、その意見の発表は丁度オオクチバスが、特定外来生物に指定される時期と重なり、圧倒的な世論で、ブラックバスを商業的目的で全国に放流した行為が批判され、遊漁でもリリース禁止が当然視され始めた最中のことだった。しかしこのような意見が出れば、行政は慎重になる。外来生物法では、捕獲即原則殺処分という流れしか対応のしようもないのに、「それは排外主義」と唱えられたことで、残念ながら最後のところで国は責任を回避し、都道府県に判断を振ってしまった。埼玉をはじめ複数の先進県では、魚類に対して内水面漁業管理規則によりリリース禁止、殺処分を規定している。

整理するとこうなっている、特定外来生物法の中で特定外来生物と認定されることで、その生物の輸入、移動、保管、販売、飼育が原則禁止される。既に自然の中で生存している特定外来生物が釣りなどでたまたま捕獲されたときどう扱ったら良いのだろう。生体のママその場から持ち帰ったり、自宅で飼ったり、他の川にリリースすることは法律で禁じられている。しかしこの法律では、その場でリリースすることは違法では無い。入間川(県内河川全域)でその違法性を規定しているのは埼玉県の内水面漁業管理規則という例規でそれに基づく法体系だ。この内水面漁業管理規則の中で、特定外来生物のリリース禁止を詠わない限り、その場での殺処分が求められない。筆者も勿論ことさら生物の殺処分を願うものでは無いが、これまでの狭山市の外来魚駆除事業の場合は、市環境センターにも協力を願い、焼却、又は肥料化の道筋を作っていた。確かに、一人の子どもがそのことと直面したとき、中には越えられない心の問題も発生すると思う。私はその子どもに強要するものではないが、特定外来生物の扱い方も充分承知した上で遊漁を楽しんでもらいたいと思っている。入間漁協ではブラックバス回収BOX(写真)を随所で設置してる。これもまた理解を深め、繋げる一つの方策だと思う。

さやまの主な特定外来生物

魚類

コクチバス

オオクチバス

ブルーギル

両生類

ウシガエル

鳥類

ガビチョウ

哺乳類

アライグマ

爬虫類

要注意外来生物

アカミミガメ

植物

ナガミヒナギク

オオカワヂシャ

オオキンケイギク

アレチウリ