事業仕分け・川の再生 (平成22年3月3日)

平成22年第1回定例会一般質問(一問一答制全文)

事業仕分けについて

◆6番(伊藤彰 議員) おはようございます。

未来フォーラムの伊藤彰でございます。議長のお許しをいただきましたので、私からの一般質問をさせていただきたいと思います。

昨年秋、国において行われました事業仕分けは、マスコミを通じて報道され、行政の無駄を見直すすぐれた手法として国民の期待を集めました。狭山市においても、事業仕分けの導入については、これまで公明党の磯野議員により本議場において提案され、執行部も導入を検討されてきたことと考えます。

改めて事業仕分けについて説明いたしますと、市民などの専門家を含めた第三者委員を選任し、その仕分け委員会の中で市の行っている事業について目的を明らかにし、さらに、これまでの成果を示し、仕分け委員会において討議していただいて、順次継続していく事業なのか、県が行うべきなのか、国なのか、民間なのか、廃止すべきなのかなどと事業を公開の場で仕分けていく作業です。全国の自治体もそうですが、狭山市も市制施行56年目を迎え、戦後新憲法、地方自治法のもとで行ってきた事業について、再確認や見直しを進めるべき時代に来ているのではないでしょうか。事業によっては、目的の重複しているもの、古い制度のまま継続し残ってきたもの、目的からして効果の上がらないものなど、改善が必要でありながら手のつけられていないものも、自治体の長い歴史、年輪の中で、見直しの必要なものがあると思います。

事業仕分けのすぐれているところは、民間から第三者委員を選任し、しがらみのない評価ができること、また、すべて公開し、市民世論を受けながら公明正大に行えることなどがあります。このような手法も市民の認知度の低いときに行おうとすると問題の表層だけ、あるいは形だけに終始するおそれがありますが、昨年の国会による事業仕分け以降、国民にも認知され、期待も高まっている中で、狭山市としても取り組む必要性を痛感いたします。

そこで、市長にお伺いします。

事業仕分けの実施について、現時点の市長のお考えをお聞かせください。事業仕分けについては、通告の中で、さらに詳細の質問を用意させていただいておりますが、順次2回目以降、行わせていただきたいと考えております。

さて、総務省の行革プランの指針にも触れられていたと考えますが、行政評価制度について、事業仕分け制度と関連して質問いたします。

私たち未来フォーラムでは、市行政の総点検のために行政評価制度の早急な制度整備をお願いしてまいりました。既に、市としては庁内評価については行政評価を実施、行革プランにも反映されていますが、第三者委員による評価制度の導入がいまだ行われておりません。行政評価制度の現状と第三者委員による評価の導入時期について、取り組み状況をお願いいたします。

行政評価制度と事業仕分けについて整理いたしますと、行政評価制度は、あまたある自治体事業について、現状の事業成果がどうなのか、評価基準を明確にして評価し、改善点を見出していく制度です。事業仕分けと違うところは、改善といっても自治体事務として、特に費用対効果などについて改善していくものです。その点、事業仕分けのすぐれているところは、事業の担い手を国、県、民間、廃止など役割分担について議論を行うことです。

さらに、すべて公開の場で行政マンだけではなく、民間人の第三者委員を選任し行う点だと思います。行政の刷新という意味では、どちらもとてもすぐれた手法で、狭山市としても、早い段階での整備を強くお願いするところですが、いずれにしても、同制度は、どちらとも基本的に執行部自身の自己改善能力を高める仕組みだと思います。つまり、執行部自身がやることなわけです。

したがって、そこで問題になるのは議会の存在だと思います。本来議会の機能こそ市の事業を評価し、改善を求め、市の事業をよりよくするための存在のはずです。行政評価制度や事業仕分け制度は、ある意味、その事業として矛盾する部分がある制度と言えると思います。しかし、2,000以上と言われるすべての自治体事業について、執行部による自己改善能力を高める仕組みとして、事業仕分けの中で自治体事業の総点検を行うべきことは、市民の中でも、行政の中でも、また議会の中でも時代の潮流であると感じております。そのような意味では、行政評価制度や事業仕分けなどの制度が各自治体で始められているということがうなずけると考えます。

ただいま行政評価制度と事業仕分け制度について、行政の自己改善能力を高める仕組みと総称して申し上げましたが、狭山市がこれらの制度を整備して実施していく場合、狭山市の立法部、ルールメーカーとして、市議会にもぜひとも制度設計上の役割を与えていただきたいと考えます。それは、事業仕分け、行政評価制度、双方に共通する課題、私は今後議会内部で協議も必要と考えますが、それは事業の評価づくり、評価の基準づくりだと考えております。行政評価にしても、事業仕分けにしても、何をもって各事業を評価していくのか、その評価の基準づくりが重要だと言われております。すなわち、窓口業務を評価するにしても、何をもってその窓口業務がすぐれていると評価するのか、あるいは申請業務、申請を受け付ける業務一つにしても、何をもってその事業がすぐれていると評価するのか、そういった一つ一つを評価するための基準づくりが重要だということです。事業の目的は行政の執行部の所管だと考えますが、評価の基準こそはチェック機関である議会の役割の範囲だと考えますが、市長のお考えはいかがでしょうか。

川の再生について

次に、川の再生について質問いたします。

入間川を日本一きれいな川にしようということで、川の再生と魚道の設置について、市長の一般的見解をお尋ねいたします。

昨年4月、私も参加している荒川流域市民ネットワークは、荒川南部漁協、入間漁協などの協力を得て、標識アユによるアユの遡上調査を行いました。既に、平成19年3月定例会でもご案内したとおり、近年、荒川水系は天然アユの遡上が飛躍的に改善しております。平成14年には、秋ケ瀬の堰を遡上したアユが7万1,161匹だったものが、平成18年には46万3,145匹、平成19年には58万3,775匹、平成20年には93万8,904匹と増加しております。

そこで、同年同団体では秋ケ瀬の堰上流の最大の障害とされてきた川越の菅間の堰を越えた場合、アユはどこまで遡上するか実験を行いました。その結果、入間川においては奥富の堰、通称稲荷の堰と言われておりますが、その下で遡上した標識アユが多数確認されました。秋ケ瀬の堰より上流のすべての堰堤に魚道が設置されれば、天然アユの自然遡上が可能なことが証明された形です。これは、狭山市を初め流域自治体が環境基準を策定したり、公共下水道の設置などにより取り組んできた水質浄化の大きな成果だと考えております。入間川は、平成17年には関東地方で二番目にきれいな川として認められました。近年では、コイヘルペスによって、関東地方の河川が汚染された際にも、入間川だけは感染を免れ、遊漁者によっても生物生態系の豊かな河川として認識されつつあります。水質だけではなく、河川の生態系全体の再生を促進するために、魚の一生の物理的障害である堰堤の魚道設置について、市長のお考えをお聞かせください。

私は、第一義的に管理者である埼玉県に魚道設置について取り組むべき義務があると考えております。特に、魚道の設置基準のなかった古い堰堤、設置者が不明な歴史ある堰堤については、ぜひ県の事業として推進していただくように、流域市町とともに狭山市としても要請していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

以上で、私の1回目の質問を終わります。ありがとうございました。

◎仲川幸成 市長 おはようございます。

初めに、事業仕分けの実施についてお答えいたします。

現下の経済社会情勢において、簡素で効率的な行財政運営を実現するためには、事務事業の廃止を含めた抜本的な見直しが必要であると考えております。こうした点で、国を初め県内でも幾つかの団体が実施している事業仕分けは、行政サービスの本来の目的を再認識し、事業の存続や内容の見直しを行う上で非常に有効な手段の一つであると認識しております。

しかし、一方では十分な説明や理解がないままに短絡的に判断が下されやすいと指摘もあることから、当市としては、従来からの行政評価制度を推進する中で事業仕分けを組み入れて実施してまいりたいと考えております。

次に、事業仕分けや行政評価の基準づくりへの市議会の参画につきましては、事業仕分けなどを行うに当たり評価基準は必要と考えますが、事業仕分けを主催するシンクタンクの構想日本によれば、仕分け人個々の事業への切り口を尊重する上では、評価基準は緩やかにということが原則の一つになっているとのことであります。最初から詳細な基準をつくるのではなく、大枠の基準のもとで仕分けや評価を行い、これを積み重ねる中で、基準の内容の充実を図っていくことが重要であると考えており、こうした点では基準づくりを市議会へゆだねるというよりも、執行部から仕分けや評価の結果を市議会に報告し、市議会からもご意見をいただきながら、基準についても必要な修正を行っていくことが必要であると考えます。

次に、川の再生と魚道の設置につきましては、川の流れの連続性は、そこに生息する魚を初めとする水生生物の生態系を守り、生物の多様性を高める重要な役割を果たしていると認識しております。

したがいまして、川の再生を図り、自然環境を確保するためには、川の流れの連続的つながりを確保するための魚道の設置や動植物の生息に配慮した多自然型護岸の整備、さらには川のしゅんせつ工事等、川本来の生態系機能を誘導する整備が必要であると考えております。

次に、魚道設置についての県への働きかけにつきましては、現在県では「川の国埼玉」を実現するため、平成19年川の再生基本方針を定め、清流の復活、安らぎとにぎわいの空間創出の2本柱により、川の再生を図るため、先導的なモデル事業や地域が主体となって活動する水辺再生100プランなど各種事業を展開しております。そこで、これらの状況を踏まえ、本市も加入している入間川水系の利水、治水、さらには環境整備を目的とした入間川水系改修工事期成同盟会や入間川河川敷利用促進期成同盟会に働きかけ、関係市町と連携を図りながら、河川管理者である県に魚道の設置を要望してまいります。

以上です。

◎松本晴夫 総合政策部長 お答えいたします。

まず、行政評価制度の現状につきましては、当市では平成15年度より主要な事務事業を対象に事務事業評価を実施しており、平成21年度におきましては、平成20年度に実施した396件の事務事業を対象に評価を実施したところであります。評価の視点としては、事業仕分けと同様に、官民の役割分担や市民ニーズなどの必要性の評価を、また当該事務事業の効果などから有効性の評価を、さらにはコスト面などから効率性の評価を実施するとともに、これらを踏まえて当該事務事業の今後の方向性として、継続、内容の見直し、抜本的見直し、廃止、休止、完了のいずれかに仕分けしております。

また、評価は第一義的には事務事業を所管する課が自己評価しますが、必要性、有効性、効率性について、一定の基準に満たない事務事業や今後の方向性が抜本的見直し、廃止、休止となった事務事業については、各部の次長職で構成する庁内評価委員会において、第2次評価を実施しており、平成21年度においては36件の事務事業を再評価し、うち10件については、第1次評価を見直しして、抜本的見直しが必要であると評価したところであります。

さらに、平成21年度からは総合振興計画の中期基本計画に掲げられた取り組み目標を対象に施策レベルの評価も試行的に開始したところであります。

次に、第三者委員による評価の導入につきましては、評価の客観性や公平性を確保する上で、その必要性は十分認識してるところであります。これに関して、平成21年度から市民で構成される行財政改革推進委員会において、第三者評価を試行的に実施したところであり、具体的には第2次評価の対象となった事務事業について、委員個々から意見等をいただいたところであります。当面はこの行財政改革推進委員会を第三者評価の場として位置づけ、評価の拡充を図ってまいりたいと考えております。

以上であります。

◆6番(伊藤彰 議員) それでは、引き続きまして、まず事業仕分けに関連いたしまして、質問を続けさせていただきます。

事業仕分けは、仕分け人に対して、また全市民への公開の場で執行部が事業の目的を説明いたします。体験した自治体職員の見解としては、事業の所管部署あるいは担当ごとに事業の目的、その再認識につながったとの声が上がっております。市制施行50有余年として、重立った事業について、その目的を明確にすることは大変有意義だと考えますが、職員あるいは全市的な事業目的の再認識について、この事業評価制度の効果はどのようにお考えでしょうか。

◎松本晴夫 総合政策部長 お答えいたします。

事業仕分けの場合、事業の所管部署は現下の社会経済情勢や市民ニーズなどに照らして、事業の必要性や目的及び効果などを仕分け人に的確に説得力を持って説明する必要があり、そのための準備を通じて、当該事務事業の目的についても再認識する契機になるものというふうには考えております。

以上です。

◆6番(伊藤彰 議員) また、目的が明らかになることによって、事業の従前の手法、事業環境の現状の変化、成果の歩みなどの確認が今後の効率的な運営のために大変役立つと考えます。こういった効率的運営を今後行うための効果として、事業仕分けの効果について、部長のお考えをお聞かせください。

◎松本晴夫 総合政策部長 お答えいたします。

事業仕分けに向けて事業の目的を再認識する中で、これまでの手法や内容、効果についても再評価することになり、これを踏まえて、事業の改善や効率化に向けての見直しも図られることが期待できるものと考えております。

以上です。

◆6番(伊藤彰 議員) 次に、市民に対する最大の説明の場ということについてですけれども、こういったことを事業仕分けは、市民も交えて、しかも公開の場で行うわけですから、市民に対する市の事務事業の最大の説明の場所となると思われますが、その辺についての部長のお考えをお聞かせください。

◎松本晴夫 総合政策部長 お答えいたします。

市の事業の市民への説明の方法としましては種々ありますが、事業を所管する部署が事業の存亡をかけて、微に入り細に入り直接に説明し、質疑に応じるわけで、耳目を集めることによって、説明の方法としては非常に効果的なものであるというふうには考えております。

◆6番(伊藤彰 議員) 次は、ちょっと視点が、言い回しが非常に難しいのでわかりづらいかもわかりませんが、この事業仕分けを行うことによって、事業仕分けを行うための市の執行部も環境整備をしていかなければならなくなっていくと思うんです。事業仕分けを行うだけで、そこに行き着くのは大変な事業だというふうに私もまず考えておりますけれども、しかしながら、行政がそれらを行える体制づくりをしていくことによって、行政マン全体に具体的な改革意識、全市民的な視点を認識していただいて、恒常的な行革体質につながるのではないかというふうに考えますが、その点についての見解をお願いいたします。

◎松本晴夫 総合政策部長 お答えいたします。

事業仕分けに臨むに当たりましては、事業の必要性、目的、効果等について、改めて検証することになり、こうしたことを積み重ねることによりまして、おのずと職員や組織の中には改革意識というものが生まれ、さらには根づいてくるというふうには思うところであります。

以上です。

◆6番(伊藤彰 議員) 実は、私たち先進市を訪問しまして、体験された職員さん、担当の課長に事業仕分けについて何を期待するかという質問をしたわけなんです。沖縄県が、県ですけれども、先進的に取り組んでおるんですけれども、沖縄県で事業仕分けについて調査させていただいたときに、県の職員さんから、市町村こそ事業仕分けをぜひ率先して行ってもらいたい、行うべきじゃないか、こういう指摘があったんです。地域に根差した市町村こそ、これまで自治体が行ってきたことであっても、新たに民間で担える体制を見つけ出したり、行政の負担を改善できる可能性があると、こういう指摘をしていただきました。ある意味、国でも県でもできない新たな、市長の施政方針でも、新しい公共という問題提起があったと思いますけれども、そういう新たな担い手づくりを見つけ出すのは、市の事業仕分けの中でこそできるんじゃないかと、こういう期待がありました。そのような視点で必要と考えるんですけれども、市の見解を部長からお願いいたします。

◎松本晴夫 総合政策部長 お答えいたします。

事業仕分けを実施する中で、特に市民に直接関係のあるサービスを提供しております市町村におきましては、行政が実施する必要があるのか、あるいは市民や民間にゆだねたほうが適当なのかなどの議論を重ねることによって、公共サービスの新たな担い手の創出にもつながってくるものというふうに考えております。

以上です。

◆6番(伊藤彰 議員) ありがとうございます。

また、この事業仕分けを行っていくことによって、自治体はさまざまな事業を行っているわけですが、実際の市民の世論に触れたり、具体的にどういうことを求められているのかということを見きわめる機会にもなるというふうに考えるんですけれども、その辺の見解をお願いいたします。

◎松本晴夫 総合政策部長 お答えいたします。

事業仕分けの中では、事業の必要性等について説得力ある説明をするために、そのためには市民ニーズを踏まえての必要性を明示することが求められてくるわけで、そのためには市民ニーズの把握や見きわめ、そういったものをおのずと行うことになるというふうは考えております。

以上です。

◆6番(伊藤彰 議員) 最後に、先ほど市長にご答弁いただいた中で、狭山市においては、これまで取り組んできた行政評価制度をさらに発展させる中で、この事業仕分けに取り組んでいきたいんだと、そういうご答弁がありました。確認のために、私はこの二つの制度というのは、全く別個のものではないと思っております。やはり一体的に一つの完成された行政の改善力を高める仕組みとして、狭山市型のものを求めていただきたいと思ってるんですけれども、平成22年度、ぜひ公開の場でやっていただきたいんですが、市長、その辺はいかがでしょうか。

◎仲川幸成 市長 行政評価制度の中で行う事業仕分けになりますので、行政改革推進委員会ですので、当然それは公開の原則に基づいて行うものだと思っております。