生物多様性のガイダンス

 生物多様性条約と外来生物法の理念とは 
 生物多様性条約とは、地球規模で各国・各地域の在来生物を守り、多様な生物環境と多様な種(DNA)を保全する為、1993年12月29日発効した国際条約。それに基づく日本国の法律、施策等を外来生物法で定められている。
 近年人の手による外来生物の移動によって、地球上各所で、本来はその地域に存在しないはずの生物が繁殖している。それにより、これまで培われてきた地域環境での食物連鎖、生物生態系が崩れ、在来の生物が減少、変化、絶滅している。そのため地球規模で各国が協力し、在来の固有種を守り、侵略的外来種を防除することで、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、地球上の多様な種(DNA)を保全することを通して、地球全体の環境保全、及び人類共通の公共の福祉(医療・薬学・生物学の発展)に資する事を目的としてる。

 特定外来生物とは 
特定外来生物とは、外来生物法で定められた、外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産物への被害

をもたらすもの、及びもたらす可能性があるものをいう。特定外来生物は、生きているものに限られ、個体だけではなく、卵、種子、器官も含む。ほ乳類25種類、鳥類5種類、爬虫類16種類、両生類11種類、魚類14種類、クモ・サソリ7種類、甲殻類5種類、昆虫9種類、軟体動物等5種類、植物13種類で、在来生物に対して侵略的な被害を与える為に、取り扱いを規制する生物を言う。これに指定されると、生体の飼育・栽培、保管、運搬、輸入などの取り扱いを規制され、防除等(予防と駆除)を行うこととなる。

 地域の環境保護と生物多様性 
地域の環境活動として、その地域にどのような生物が生息しているのか調査・観察し、その地域の特性や、植生、生態系を把握することはとても大切なことだ。その中で、地域に生息している在来の生物、絶滅の危惧される動植物、外来の生物、特定外来生物の実態調べ、知見を深め、地域での絶滅危惧種や生態系の保全の対策、特定外来種などの侵略的外来生物の対処について考え、協議し改善の道のりを地域でともに取り組んでいける体制作りが重要だ。
 生物多様性を保全していく為には、さらに、地域に残された自然環境の多様性を保全する、または自然環境の多様性を再生する取り組みも大切だ。例えばコンクリート護岸ばかりの河川は、河川管理者と協議し、葦、蒲などの水際植物の群生領域を確保する。周辺の樹木、森林の保全も地域の生物多様性を確保していく為に必要なことだ。人にとっては見栄えの悪い雑草の茂みですら、昆虫、野鳥、付近の水辺に棲息する魚類にとっても貴重な棲息領域であり可能な限り保全していくことも配慮していく必要がある。生物の多様性は、自然環境の多様性を基盤としていることに注意を払っていきたい。

 人種と多文化共生 
 人は生物学上「ホモ・サピエンス」の単一種。人は顔つきが違ったり、肌の色が違ったり、言葉や習慣が違うなど、人は様々な地域性と文化的な多様性があるが、この生物多様性で学ぶ「生物の種」と言うことから言えば、アメリカ人も中国人も日本人も地球上のすべての人種は皆、同じ種の生物。
 グレートジャーニーという言葉がある。30万年ほど前にアフリカの大地溝帯で生まれたホモ・サピエンスは、十数万年を掛けて、アフリカ大陸→ヨーロッパ→中東→ユーラシア大陸→ベーリング海峡→南北アメリカ大陸と徐々に活動範囲を広げていったという。日本列島に日本人のルーツが上陸したのは3万年前だと伝えられている。人の移動はたったの数万年~十数万年の歴史。しかしその地で進化した生物は、それぞれ30億年から40億年の進化の歴史がある。時間の尺度を見ると10000倍の違いだ。それだけ人種の違いは小さく、在来生物と外来生物間の違いはそれほどまでに大きい。
 身近な例を見てみよう。入間川の野鯉(コイ目コイ科)とコクチバス(スズキ目サンフィッシュ科)の違いは、色も形も食物も生態も違い、家猫(ネコ目ネコ科)とセイウチ(ネコ目セイウチ科)以上に違うが、人種の違いは、稲荷山公園の桜とのハドソン川河畔の桜との違い程度なのだ。
 この先日本は2020年にオリンピックも開催され、多くの外国人が観光や事業、国際交流のために訪れている。狭山市も例外では無い。すでに多くの外国人が訪れ、定住し、地域社会や産業の中で一役を担っている。お互いの違いや文化を認め合いながら、多様な価値を生み出しているのだ
 さらにいえば生物多様性条約こそ、国連を通じ、生物学界と国家間の国際協調があって初めて成立した、地球規模での人類協力と協調のたまものだ。今の時代は国際交流と国際協調の時代。日本に外国人が住み暮らすことは、多文化共生を生み出し社会の発展に大きく役立っている。

 外来生物の移入と人の多文化共生とは別物 
 残念なことだが、「ブラックバスの防除は外国人排斥と同じ」「生物多様性は排外主義」との議論が、ブラックバスの違法放流に賛同する人たちから発信されている。ここで整理しておくと、いうまでも無いが、ブラックバスと外国人は全く違う。ブラックバスは今までコイ科を頂点とした草食魚系の日本の河川には存在しなかった、サンフィッシュ科の肉食魚。日本の河川にこれまでと全く違う生態系をもたらしている。在来の特に低層魚,カマツカ、ウキゴリ、ヨシノボリなどの成魚をはじめ、タナゴやフナ、オイカワのコイなどの成魚や卵を食っている。アユやヤマメ、イワナの被害報告もある。被害は甚大だ。一部のものの一時的な趣味嗜好で、日本の自然から失われてしまうものの代償はあまりにも大きいのだ。
 「ブラックバスを釣るワームフィッシングは海外の文化だから、多文化共生と相互理解に繋がる、自分たちは
それがしたいから地元に対象魚を放しただけ」と言う。これも間違っている。自然相手の多文化交流ならその土地に行くべきだ。地球上には地域地域で様々な自然環境があるから面白い。仮にそう言った人がアメリカにまで行ってコイやフナばかり釣れたら、その釣り人は面白かったと言えるだろうか、アメリカ人が日本に来てブラックバスばかり釣ったら、友釣りやテンカラ、孔雀のへら浮子やタナゴの螺鈿合切箱など和の釣り文化に触れることも無く帰ることになる、これの何処が多文化共生、相互理解だというのだろうか・・・違いがあるから面白い。違いを認め合うから相互理解に繋がるのだ。
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