学校施設の更新事業について (平成16年12月6日)

平成16年第4回定例会一般質問

学校施設の更新事業について


1,新潟県中越地震の被害状況が伝えられる中 狭山市の学校施設の耐震能力をどう考えているか。

教育長 教育部長 教育委員長


10月23日に発生した、新潟県中越地震は、マグニチュード6.8 最大震度7と伝えられています。被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。


今回の地震で私が一番印象に残ったことは、早期の段階で伝えられていた、建物の倒壊による小学生の死であります。元気で活発な子供たちであっても、いきなりの地震と瞬時の建物の倒壊から身を守るすべはありません。


このたびの地震被害は、17時56分という時間でありましたので、ご自宅での被災でありましたが、これがもし、学校の就学時間帯に発生していたら・・・そしてもし様々な要因が鉄筋コンクリートの教育施設をも倒壊させていたら・・・このようなことを考えると、行政を預かるものの一人として決して他人事ではありません。


地震被害から、最大限子供たちの命を守ってあげたい・・このように改めて述懐いたします。


さて今回の中越地震による学校建物の被害状況は、11月12日付けの新潟県教育委員会のまとめによりますと、中越地域の小中学校全310校中大きな被害を受けた物 18校 中程度の被害を受けた物 20校で、軽微な被害を受けた物は 219校でありました。主な被害は、校舎の柱・壁にひび多数、体育館外壁崩落・天井板破損・などが伝えられております。

そのうち文部科学省は、12校18棟は木造の建物が傾いたり、鉄筋コンクリートの柱に大きなひびが入っており、使用を禁止するよう求め、14校31棟は、外壁のはく離などの恐れがあり、応急処置が必要としております。


新潟大学の調査によれば、震度7の地域において、鉄筋コンクリートの建物被害が、地震動の揺れ方によって兵庫県南部地震と比べて比較的少なかったとされています。

また鉄骨構造の体育館なども、あらかじめ大きな積雪加重を見込んだ設計であったため架構耐力に余裕があり、甚大な被害に至らなかったことが、報告されています。

今回の地震は、雪国の建物構造と地震の揺れ方が幸いしたということです。

また、ある調査機関によりますと、いわゆる新耐震基準を満たさなかった建物に被害が集中していると言われています。


さてここで、耐震基準について考えて行きたいと思います。


耐震基準については、我が国の長年の地震被害の教訓から、その精度を深めてきた歴史がありますが、こちらの図のように、現行の昭和56年の基準は、有効なものと認められます。

またその評価方法は、建物の強度と変形能すなわち建物の粘りによって数値換算されるものですが、IS値という指標を用います。

このIS値が高いほど、耐震能力が優れているわけですが、その基準値は0.7とされています。


さて、地震はいつ何時起こるともしれません。私たちの地域に、向こう10年間で甚大な地震が起こるかもしれませんし、起こらないかもしれません。また30年後に起こるのかもしれません。

しかし、すでに関東大震災から80年以上経過し、関東ローム層の下には、観測されていない活断層も多数存在しているとも言われています。地震に対する早急かつ計画的な備えが必要です。


このような状況の中ですが、埼玉県内では、

昭和56年の新耐震基準を満たしていない建物に対する耐震診断が全体としては進んで、おりません。

しかし、狭山市はすでに耐震診断を行い順次耐震補強工事を実施していますが、学校施設の耐震能力について現状認識と今後耐震補強工事をどのようにに進めるのか、改めてお尋ねしたいと考えます。


2,56年の耐震基準改正以前に建築された学校施設の耐用年数をどう考えるか


次に、昭和56年の新耐震基準以前に建設された学校施設の中で、昭和46年の耐震基準以前に建設された施設について、これらの建物は、すでに築35年が経過しておりますが、鉄筋コンクリートの学校施設の耐用年数は47年とされております。鉄骨構造の体育館などは耐用年数が38年ですが、中にはあと数年で47年を迎える建物もあります。

現在教育部局は耐用年数についてどのようにお考えでしょうか。

また昭和46年から昭和56年の新耐震基準前に建設され、現時点で耐震補強工事のなされていない建物の耐用年数は、どの程度と考えるのか、お考えをお聞かせいただきたいと考えます。


3,今後の学校施設の更新事業と将来の考え方は

*学校の統廃合に関して

*教育委員会の取り組みについて

次に、今後10年間を考えると、いわゆる高度成長期に、多数建設された、様々な学校施設が耐用年数を迎える状況になって参ります。これらの更新事業については、様々な、議論の中で総合的な視点で検討される必要があります。

すでに都市近郊の市町村では、学校の統廃合や、学校区の見直し、少人数学級や今日の教育の在り方も考慮に入れて新しい学校教育の計画を作成している市もありますが、これらの問題に付いて、教育長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

また、これらの問題を教育委員会としてはどう審議していくのか、現時点での問題意識をぜひ新教育委員長にお聞かせいただきたいと思います。


4,更新事業の財源の問題と財政問題

さて最後に、財政問題について市長にお尋ねいたします。

昭和56年に新耐震基準が国によって改正され、それによって学校施設については、まず耐震診断、次に耐震設計、そして耐震補強工事とのプロセスを経なければ、大規模改修や立て替えに至らないという、財政難の時代に逆に国の方針によって遠回りとも思える制度ができ、思うように施設の更新事業が計画の俎上に乗せづらい状況とも言えます。

そのような中にあっても、施設の提供者としての市の責任は重大な物があると考えます。

十分な財政的余力がないところでは、施設の更新の時代を乗り切ることはできないと考えますが、今日市長は、特にこれら学校施設の更新事業について財政的な見通しをどう考え、とらえておられるでしょうか、お考えをぜひお聞かせいただきたいと考えます。


かつては、鉄筋コンクリートの建設物は、その耐用年数が60年とも100年とも伝えられたこともありました。

しかし今日の認識では、耐用年数自体が震災などの影響もあり下方修正されておりますし、酸性雨の影響によるセメントの中性化による劣化も個々の状況を実際に診断してみないと分かりません。

また、これまでは、地方自治法上自治体会計は単式簿記を基本としてきた中で減価償却の累計分の資金の蓄積についても、十分な認識と配慮がなされなかったのも事実で、現時点で立て替えと言っても、資金的に実現可能とは言えません。

このような、資金問題に気が付いてきた今日こそ直ちに決断し、これを埋め合わせていかないことには、更新資金の形成も難しい事は、先の一般質問でお話しいたしました。

特に学校施設については、早い段階で資金計画も含た更新計画を念頭に置いていくべき段階にあると考えます。


先般いよいよまとまった、合併協議会状況報告書の中でも明らかにされているとおり、ひとまず耐震補強工事については、特例債措置を講ずる事が決まりましたが、これは英断だと思います。

時代の進展の中で分かってきたことに直ちに財政的措置を講ずる為には、現時点では合併特例債を用いるぐらいしか方法がないのが実状です。

耐震補強工事や校舎の更新事業について合併に向けたお考えも含めて、ぜひとも市長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

以上で私の一回目の質問を終わります。



2回目

それぞれご答弁ありがとうございました。まず教育長のご答弁にありました様に、是非とも毎年2校の目標が達成されるように要望いたします。

次に、耐用年数について、物理的劣化は文部省の財産処分制限60年と言うことが述べられていますが、教育長の認識どおり私も60年の耐用年数には疑問があります。

財産処分制限として言うのは、一般的にそう認識されてきたようですが、今日問題になっている酸性雨によるセメントの中性化は、かなり深刻なものと解釈しています。

特に昭和46年の基準以前の校舎等については、耐震診断でも予想を超えるIS値も計測されていますので、実際に耐力度診断をしてみると楽観できる結果は得られそうもありません。

子供たちの安全と安心、災害から命を守ると言う観点から、また資金的な見通しを考えても更新事業の早期の長期的展望にたった計画策定を要望いたします。

また、教育委員長のご答弁について申し上げます。今回私は、学校・学区の再編、子供たちの安全と安心のための更新事業という問題定義をさせていただきました。

教育委員長の仰るとおり、このような計画を考えていく為には、地域の理解と協力そしてまた、地域の学校に対する今日的な要求など十分な配慮が必要と考えます。

教育委員会におかれましては、早い段階でその様な研究に着手され、地域の要望と整合性ある統廃合や、更新事業について検討を重ねていただきたいと考えます。この点について要望させていただきたいと思います。


最後になりましたが、市長今回、学校施設だけを取り上げて、耐震補強や更新事業について述べさせていただきました。

言うまでもなく、この問題は、学校施設だけの問題ではありません。


これからの、施設の維持を考えたとき、やはり資金の問題が重要となってきています。

耐震補強の問題に立ち返りますと、今回市長の仰っているとおり、合併時の新市建設計画の重点政策に加えた事によって、合併特例債の措置も得られる見通しがたち、狭山市だけでなく両市の耐震補強が合併によって早期に実施できると考えますが、一部にはそのことについて未だに間違った認識があることを申し上げたいと思います。

それは、特例債措置が、直接見込まれているのが、特例項目の格差の是正と言う見地から、耐震診断すら行っていない入間市分についてだけである言うことを持って、合併特例債も入間のために使う事になり、合併は意味がないと言った、まったく誤った認識があることです。

それについて言えば、入間市分を特例債で7割国が資金を見ることによって、狭山市分の耐震補強工事の資金について狭山市民と入間市民の税を回すことができるようになり、単独市で続けているよりもなおいっそう早期に実施する事が見込めると思うのです。

両市の子供たちの安全と安心のために是非ともその辺の説明とともに、実施に向けていっそうの努力を要望いたします。

以上で私の一般質問を終わります。





【2004年新潟県中越地震の概要】

発生時刻:2004年10月23日17時56分

震源地:新潟県中部、震源の位置:北緯37.3度、東経138.9度、深さ約13km

マグニチュード:6.8、最大震度:震度7

最大加速度:1750ガル (余震最大2515ガル