自治体における減価償却費と基金会計について (平成16年3月8日)

平成16年第1回定例会一般質問

自治体における減価償却費と基金会計について

次に、これからの自治体の財政運営について質問いたします。

初めに申し上げますが、私は財政論からの合併推進の立場です。その意味で、現在市が取り組んでいる財政健全化の取り組みと市町村合併の方向性について、賛同する立場です。財政論から合併を論じますと、30万都市のビジョンづくりや市民を巻き込んだ合併協議の議論が後退してしまうおそれがあるため、議場での議論は控えてまいりましたが、法定協議会が設立され、合併協議が始まろうとしている今日、今回提出した点について市長の所見をお尋ねしたいと思います。

質問点は、市の行政サービスの基盤となるあらゆる公共施設の長期的な維持と市の責任についてです。

さて、平成14年度のバランスシートによりますと、市内すべての有形固定資産の取得価格は 2,441億 5,996万 3,000円であり、現時点で減価償却の累計が 840億 1,748万円でありました。民間企業において減価償却費とは、設備の更新に備え、内部留保資金として蓄積することが本来のあり方です。そう考えると、現時点で 840億円の内部留保資金が必要ということになるのではないでしょうか。自治体の有形固定資産には、道路、街路、区画整理、農村整備、公園など一度取得すると、補修や改良はあっても一から更新することのないものも含まれますので、それらを除き、さらに土地を除くと、主に建物等の資産の概算を出すことができます。それらの取得価格の合計は 900億 3,382万 4,000円となり、平成14年度段階の減価償却累計額は 492億 6,667万円となりました。概算ですが、既に 500億円近い減価償却が発生していることになります。そこで、この 500億円を基準に実質的な必要資金について試算することにします。

自治体の資産の取得には、国・県などの補助制度があり、用途や制度によってその補助内容はさまざまですが、仮に50%補助を見込みましょう。さらに、自治体におけるバランスシートの算出には、減価償却を建物の耐用年数から求めるのではなく、おおむね30年でくくられていますので、これも仮ですが、耐用年数をその倍の60年とします。また、公共施設の建設コストについては、将来の市民にも負担を願うことが必要という議論もあります。現在の既存の事業に対して、どの程度負担を願うのかという議論もきちんと整理していくべきと考えますが、仮に更新時、50%の資金を借り入れによって賄うと仮定しました。このように、自治体の設備投資ならではの、かなり甘い想定ではありますが、このような想定のもとに試算したとしても、現時点で最低でも63億円の内部留保資金が更新事業だけのために必要ということになります。これには、補修や改修の経費は含まれておりません。

今回、私の試みの計算はかなり大ざっぱなものですが、私はこれまで、自治体経営に減価償却の累計に見合った内部留保資金蓄積などの財政的措置がなかったと思います。この点について、総合政策部長にお尋ねします。

このように、自治体は施設サービスの規模に応じ、それを長期的に維持していくために、更新資金の規模も膨らんでくると考えますが、これまでその試算については行ってきたのでしょうか。また、市として試算を行った場合、どの程度の基金が必要なのでしょうか。

そこで、市長にお尋ねしますが、市長は、今現在のサービス水準を維持可能な状態にしたいというお考えで行財政改革、財政の健全化に取り組まれておりますが、既にこのことにもお気づきであると思います。私は、仲川市政に限らず、これまでの自治体経営においては、学校も図書館も保育園も市庁舎でさえ、長期的に維持していく手だてがそもそも考えられていなかったことを示しているように思うのですが、いかがでしょうか。

狭山市も市制を施行して半世紀がたとうとしています。高度成長期やバブル景気で税収が膨張してきた時期もありました。かつては 100億円からの基金があったと聞いています。しかし、その基金を取り崩してしまったのは、決して現在のような深刻な財政危機が理由ではなかったと思います。現在、税収の落ち込みの中で、やむにやまれず基金を活用して、何とか予算編成を行っていることを決して直ちに否定するものではありません。これから先数年間は、短期的に事業費のかかることも予測されています。行財政改革のきっかけはどのようなことであったにせよ、逆にこのような時期だからこそ限られた財源の中で、なお一層の内部管理費や事業コストに対するコストを見直し、現実に市が発展する手だては何なのか、その中で、本来の財政運営はどうあるべきなのか、その方針を明確にしていただきたいと思います。

さらに、これからの自治、これからの自治体経営を考えたとき、やはり市民を巻き込んで行政サービスの守備範囲はどうあるべきなのか、公論に付し、見直しを行うときが来ていると考えます。現在の行政サービスは、市民の要望に基づいて発展してきたことも事実です。皆さんの税金を皆さんのためにどう使うべきなのか。市長がかねがね論じられているとおり、自治体の財政の現実を市民に問うていく中にも、この問題についても明らかにし、市民に協力と理解を求める必要を感じますが、いかがでしょうか。

そして、最後に、今日始まった入間市との合併協議の中で描く新市構想においても、まず狭山市長としてはどのようにこの問題について臨まれるのか、そして新市の財政運営のビジョンをどのように描かれていくおつもりなのかお聞かせいただきたいと思います。

合併という大きな問題、大きな課題に取り組んでいく今だからこそ、合併協議と市民を巻き込んだ議論の中で、これまで単式簿記という自治体会計の形の中で隠れていたこの問題について、できるだけ速やかにしっかりとした指針をお示しいただきたいと思います。

以上、私の1回目の質問を終わります。ありがとうございました。