教育部局の財政状況について (平成14年6月11日)

平成14年第2回定例会一般質問

教育部局の財政状況について


1,教育の財政状況をどう認識するか

議長のお許しをいただきましたので、未来フォーラム5番伊藤あきらより一般質問をさせていただきます。

今回の私の質問は、厳しい状況にある狭山市の教育財政についてであります。

財政の硬直化につきましては、すでに様々な機会において指摘させていただきましたが、今回は特に教育について言及させていただきたいと思います。

教育について論ずるに当たり、大切なことは、自治体の政策のなかで教育は、地域の人づくりの掛け値なしの要でありますから。私は徹底した財政改革の努力を行った上で、必要に応じ十分な資金を投入する必要があると考えています。

そのような意味で今回の質問が教育に関わる総てみなさんの理想に向けた英断を促進する機会となれば幸いと考えています。


今回私が教育の財政問題について論じようと考えたのは、昨年の教育委員会幹部のちょっとした発言がきっかけでありました。

「今教育にはお金がないので、校庭の樹木については、毎年剪定をかける経費もままならない、やむなく剪定が2年から3年に一度で済むように*強剪定したい*」 と言うものであります。


私は、当時この話を聞いたときにとても胸の痛む思いがいたしました。

狭山市の子供たちは新緑の日に校庭でどんな木々を描くことになるのだろうと、伸びゆく子供たちの象徴であるはずの生き生きとした樹木が維持できなくなってしまう学校経営とはいったいどうなっているのかと深い疑問を感じざるを得ませんでした。


実はこの問題は市長、教育長を始め関係者のご理解によって、またPTAの皆様のそれぞれの取り組みの中で単純に学校の樹木を強剪定する事はなくなりましたが。

もしかしたら狭山市中の学校の木の枝が無くなってしまっていたかもしれないほど関係者を苦しめている、財政危機とはいったい何なのだろうと、当時私は素朴な疑問にとらわれたのです。


さて、公共建築物の建て替えの問題につて言及しましょう。狭山市全体で延べ床面積300m2以上の公共建築物のうち建築後30年以上経過しているものは38棟ありますが、そのうち教育委員会の所轄するものが30棟あります。

さらに建築後20年前後であっても老朽度自己診断結果によって老朽化が進んでいるものを含めると、市内公共建設物ワースト50の物件中、教育の所轄するものが39棟さらに内小中学校と幼稚園施設で36棟にもなります。

これらは、文部科学省の方針で耐震診断、耐震補強設計、耐震補強工事、と言うプロセスを必ず踏んでいかなければ大規模改修はできません。しかし大規模改修も含めて随時計画的に改修を進められなければなりません。


すでに昨日配布された、狭山市総合振興計画実施計画に於いては、

耐震診断調査 15年 1 16年 1 960万円 1400万円

耐震補強設計 14年 1 15年 1 16年 1 700万円 700万円 700万円

耐震補強工事 14年 1 15年 1 16年 1

10600万円 11,890万円 10600万円

などと計画されています。


毎年耐震診断、耐震設計、耐震補強工事、とそれぞれ一校ずつ進展させていく計画です。

しかし果たしてこのテンポで行って、学校等教育施設の改修や建て替えが耐用年数から判断して間に合うのでしょうか、

この実施計画のように一施設ずつ1年づらして毎年実施していくとしても、現時点で老朽化している学校施設の耐震補強工事完了まではおおむね40年かかることになります。 そこに行き着くまでにほとんどの施設が建て替えの時期を迎えてしまうことになるのではないでしょうか。

ちなみにちょうど老朽度指数50番目の狭山台南小学校はそのとき、建設後64年を迎えていることになります。47番目の堀兼中の体育館は築70年 古希を過ぎてやっと耐震補強工事が終わるのでしょうか・・・建て替えはいつになるのでしょうか

このような見通しが、狭山の教育施設に関する改修計画なのでしょうか。既に提出されている資料と実施計画を照らし合わせてみると、このようになるのですが、私の読み違えがあるなら指摘していただくとして、この辺の関係を教育次長に明確にしていただきながら、このような市内学校施設の改修・立て替えの必要性が漠然と教育財政を圧迫しているのでしょうか基本的認識についての見解を市長にお聞きしたいと思います。これはもしかしたら大変な財政的問題かもしれません。



2,時代に適応した諸政策に対応するための

財政的展望は


さらに3月議会において市長は同僚の栗原武議員の質問にこたえ、「学校間の較差の是正につとめ、将来校舎の建て替えが必要になった場合には入間川小の施設整備がその基準となる。」と答弁なさいしました。

私はその方針自体大いに賛成するものであり、できるだけ早く実現を願うものでありますが、先の議論からさらに進めて考えていくとき、その財政的展望をいかにしていくのか、特に本年で建築から30年以上たつものが11校22施設あり築50年をめどに建て替えを考えても残り20年間に11校実施しなければならないことになります。それが無理なら築60年を目途としても30年間に11校今から3年に一校立て替えていかないと30年たってもオープンスペースのエコスクールは実現しないことになります。

現実的な計画を十分な市民的規模での議論をふまえて行っていかなければならないと考えますが市長のお考えはいかがでしょうか。


さらに時代に対応した少人数学級への移行についてですがこれに関しては、未だ狭山市の教育委員会の合意形成に至らないことについて大変遺憾に思います。私たちが30人学級について趣旨採択に賛同したとき、議会の中でも残念ながら反対もありました。

しかし今日では政権政党である自由民主党も議員情報と言う資料の中で文部科学省の欧米並の20人学級など少人数学級の推進の方針を取り上げいます。私の時代はこの方向へと向かっていくこと思います。

平成12年度の統計調査で市内小学校の児童数は8947人で教員数が399人と言うことです。極論を承知で単純に児童数を教員数で割ると22人学級が直ちに完成します。30人学級の問題だけを取り上げれば、硬直化しているのは、財政だけではなく学校の数やその執行の方法にも問題があるという見方が成り立ちます。

しかしやはりコストがかかることであるのは事実です。


昨年の12月議会において私は、総合的学習の時間で個性ある学校を作り上げていくために各校に予算をいただきたい旨提案いたしました。市長は早速平成13年度予算において10万円の需用費を学校分計上しましたが「サマーレビューで実質は行って来いです。」という感想も学校関係者から耳にします。

狭山市の教育の独自性を本当に育てていく為には、きちんとコストをかけていかなければならない部分だと思います。

これらのように教育に関するコストは新たな施策の中でさらに増大していくと言わざるを得ません。現在教育部局の抱えている財政的問題は教育委員会だけの判断で解決することは難しい状況にあるのではないでしょうか、市長の政策的決断を含めて今から抜本的に取り組んでいかないと、狭山市の教育が何に向かって行こうとするのかまったく先が見えません。

これからの時代は厳しい財政状況の中で、自治体として経営努力を果たし、財政的なきちんとした見通しを持って臨み、市民に理解を得ながら実行していく市町村こそが、市民の信頼と高い満足度を得られ都市として発展することができると考えます。

新しい施策に向けた財政的裏付けについて市長及び教育長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

3 小中学校市立幼稚園の統廃合について


小中学校及び市立幼稚園の統廃合について以上の財政的状況を前提にしてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小中学校に関しては、過去議場において、空き教室の問題を取り上げて議論がありましたが、そもそも現在の小中学校の配置計画はどのような時代認識、社会背景の中で実施されてきたのでしょうか、そしてそれは低成長と少子化という現在の社会背景に適合した計画なのでしょうか、当時の判断の必然性は認めたとしても狭山市の学校配置計画として恒久的な価値があったとは思えません。


さらに1970年代に学校幼稚園を49施設と集中的に建設したことは、たとえば西暦2010年代か20年代に当然集中的に建て替えが求められることは自明であったはずですが、財政的手だてはどう考えてきたのでしょうか、教育施設整備基金は、数億円という状況でとても足りません。

少なくとも1960年代に建築された18施設は建て替えを考える時期にきていますが、現状ではきわめて困難といわざるを得ません。

40年たち社会情勢、時代背景と大きく代わっている今日こそ、学校の配置と地域的な役割を明確にしながら適正規模とは何か、今とこれからの時代どのよう施設がどのようなエリアで必要なのか位置づけを再検証しなければならない情勢にあると考えます。

教育部局は高度成長と団塊世代の痕跡を、蒙昧に維持していくだけで、やるべきことを見失ってしまい、気がついたときにはその重さにつぶされてしまいそうです。

その物理的犠牲者がでてくる前に執行部内で体を張った議論を徹底的に行っていただかなければならないと思います。

これまで入間川小の建設を教育部局の財政危機の直接的理由として掲げる意見を、私も多く耳にしましたが、物事の本質は果たしてそこにあったのでしょうか、私は違うと思います。

物事の本質は、時代の変化に対応することをおそれている現状維持の体質にあるのではないでしょうか。

財政的体力と利用者数の実状とその将来性にそぐわない過剰施設であれば、私は当然整理統合を求めますし、

時代認識と市民的需要、コスト的展望と将来性も含め適正であるとあくまでも言い切るのであれば、問題を棚上げにせず資金的手だてと、健全な改修計画や建て替え計画を議会に示すべきだと考えます。

問題を棚上げにするのではなく、衆目の基にどちらかを選び市民に問うて初めて公正な自治体の事務事業といえるのではないでしょうか。


次に市立幼稚園の統廃合についてですが、こちらの問題は平成7年から本議場でも議論の繰り返されてきたものであります。執行部は、需要の多い保育園との一元化の問題も含めて検討委員会をもち、統廃合の方針もでてきているようですが、私はこの問題は、むしろ財政論だけで議論していくことに反対したいと思います。


旧入間川町から始まった公立幼稚園という狭山の伝統は、私はむしろ多大なる成果を生んできたと考えます。施設においても、幼児教育のノウハウにおいても、優れた人材においてもそして何より多くの優秀な卒園生を育ててきたことが大きな成果だと想います。

平成7年の小林則男議員に対する当時の武井教育長の答弁は、私はむしろ骨があったと思います。地域教育のとしての公立幼稚園の位置づけと理想は、あのときはその片鱗を輝かせていたのです。

私も幼児教育の重要性は、学生の時からの専攻でもあり十分認識するものであります。しかしやはり今の入園者率をみると、定員を大きく下方修正しても4割に満たないというのでは、むしろどうして需要の多い保育園と一元化できないのか議論が巻き起こってしまっても当然と言わなければ成りません。

市立幼稚園というと言う概念は、これは一つの仮説ですが、既に歴史的役割を終えているのかもしれません。公立幼稚園を有さない市町村は全国であまたあるのです。

一方行政は幼児教育についてもっと他の形でやるべきことがあるのではないでしょうか。幼児虐待殺人という痛ましい事件が、私たちのこの狭山市で複数回起きてしまっている現実に対して、私たちは何も打つ手はないのでしょうか。母親として、あるいは父親として子育てすら負担と感じてしまうこの時代的世相に永年の公立幼稚園で養われたノウハウと人材は、何とか活用し社会に貢献することはできないのでしょうか。私は、幼稚園という施設型のサービスは1園2園という中途半端な形で廃止していくとむしろ地域意識を生み改革が難しいと想います。

むしろ施設型サービスについては私立幼稚園にその役割を引き継ぎ、蓄積された優れた人材とノウハウを幼児教育カウンセラーや民間施設に人材を派遣したり、監督する新たなる役割を与え、理想を持って発展的に位置づけていくことも一つの方法だと想いますがいかがでしょうか。

私立幼稚園の入園者に対する補助金の充実も含めて、時代に適した狭山市の幼児教育の在り方とは何か理念と理想をきちんと掲げて多くの知識人・学識経験者など民間の方を巻き込んで議論していただきたいと思います。


今回取り上げた問題は大変難しい問題だと思います。しかし困難であっても、市民の声を聞き、市の現実の状況をおそれずに伝え、時代に即した理想をきちんと掲げて立ち向かったとき、反対者があってもたくさんの理解者や協力者も生まれてくると想います。市民はリーダーシップを求めています。教育長のお考えはいかがでしょうか。