行財政改革と自治体会計について 平成13年9月10日

平成13年第3回定例会一般質問

行財政改革と自治体会計について


1,貸借対照表(バランスシート)の導入について


いりまじの

おおやがはらの

いわいづら

ひかばぬるぬる

ねになたえそね

この万葉の歌をご存じでしょうか、この歌は庁舎敷地のにあるのですが、その場所をご存じの方はどれほどいらっしゃるでしょうか。

この歌碑は、ひごろ人影の見かけない北門横の公園にあります。

さて、このように誰も立ち入らない場所であってもその場所の資産としての価値は、日に日に低くなっていきます。作った施設は有効に活用しないと、その資産価値は下がっていくのです。

同じように、私達議員も含めて、市から報酬、または

給与を得ているすべての者は、行政サービスとコストとの関係の中で、その活動が日々市民に見守られています。


本日は、そのようなコスト意識を持って、私達が活動していくために必要な制度について御提案したいと思います。


先だって私たち未来フォーラムは、大分県の臼杵市を視察して参りました。臼杵市では、平成9年現在の後藤國利市長のもとに全国の市町村に先駆けて貸借対照表(バランスシート)作りに取り組んだ市であります。

臼杵市の取り組みは、全国の自治体に反響を呼びました。平成11年には石原慎太郎都知事が、都のバランスシート作りを掲げ当選し。これがきっかけとなって大蔵省も国のバランスシート作りの必要性を表明しています。いまや貸借対照表(バランスシート)は一つの潮流となりました。

平成12年3月29日、当時の自治省も全国の自治体に「バランスシートの作成方法について」通知しました。

市議会に於いても同僚の手島秀美議員が再三一般質問で取り上げ、市の将来のサービス提供能力、債務償還能力などの把握のために積極的に導入するよう求めています。

市として導入に向けて取り組んでこられてと存知ますが、現時点での進捗状況は如何でしょうか。


さてここで狭山市の現在の財政状況について言及させていただきます。既に執行が始まっている平成13年度予算において、基金繰入金が約21億円ありました。

いわゆる基金の取り崩しは、一般会計予算の5%にも達しています。

さらに、今後取り崩し可能な基金残高を見ると

財政調整基金が7億9795万4千円。

教育施設整備基金が3億1337万8千円。

都市基盤整備基金が10億4326万5千円。

であり、合計しても約21億5千万余りとなってしまいました。基金はもう当てに出来る状況ではありません。


またバブル経済の崩壊後最悪の景気状況と言われている今日、法人市民税などの歳入も悪化しています。

このような現実を考えたとき、果たして狭山市は現在のままの市民サービスを続けていけるのでしょうか。


さらに、経常収支比率を見ると平成11年度で83.0%であり県平均を上回っております。また性質別決算額推移を見ると、投資的経費比率がここ数年極端に落ち込み、悪化の方向にあります。

財政の硬直化と言わざるを得ない状況ですが、このような中にあるからこそ、市の説明責任を十分にはたしていくために、貸借対照表は不可欠と考えます。市長は今後の財政運営をいかなる方法で説明して行かれますでしょうか。


さて今回私が取り上げた大分県の臼杵市は、大分県下で最も財政状況の思わしくない自治体です。

平成9年就任した後藤市長は、自らの就任を「インディペンデンスデイ」と称しています。これはきっと臼杵市の独立記念日と言う意味も暗に込められているのだと想いますけれど、当時は、いわゆる映画のテーマから宇宙人到来と言う職員達の感想をそのまま用いたものだそうです。後藤市長としては例え異質な存在と称されようとも、それだけの決意を持って市庁舎に登頂したのだと当時の想いが伺われます。

臼杵市は、それ以来「市役所は市民のお役に立つ所」と言うテーマを徹底し市民に対するサービスを最大限にしたいと取り組んでいるとのことでありました。

そのような視点に立って貸借対照表バランスシートでの財政状況を公開し、サービス形成勘定計算書でサービスのコストについて理解を得、市民と双方向で検証する行政評価制度を確立し、サービスに対する市民満足度を最大限に向上するべく取り組んでいったのです。


さて貸借対照表の話しに戻りますが、貸借対照表いわゆるバランスシートを導入することによって、市の財産の中身と負債の中身の状態を知ることが出来ます。

それによって、現金主義に基づいた現行の予算書・決算書の中からではつかみにくい、市の経営状態や財政の状況を把握することが出来、その内容を改善することの手助けになります。

財政再建・行財政改革のためには貸借対照表は不可欠と考えます。

単年度決算書では、現金の流れしか分からないのですが、貸借対照表を用いることによって、例えば、減価償却という概念が生まれ、資産の評価をキチンと行い行政コストの正確な把握に役立ちますし、また発生主義に基づいてすべての負債が明かとなりますので、退職金引き当て金など簿外債務も明示されます。このように正と負の資産全体の流れが把握できるのです。

大規模な施設建設などが行われた年度に突出した現金の流れを捉えるだけの単年度主義とは違って、既存の資産も含めて資産全体として捉え、一方でそのために増加した負債全体をとらまえることで、以降の財政運営の方向が明確になるのです。

減税補填債など、複雑な債務制度が取り入れられ、国も含めて借金による財政運営が恒常化している今日もはや貸借対照表の導入と公開は必要不可欠と考えます。


2,大分県臼杵市型 サービス形成勘定の導入について


次に、一般に企業経営に於いての財政諸表というと貸借対照表と共に損益計算書と言うものがあります。

損益計算書とは、当該年度に於いてどれだけのコストを掛けどれだけの売上を上げ、どれだけの利益を生んだかを発生主義でまとめたものであります。

自治体は、営利企業ではありませんので、商品の生産もなければ、利潤もありません。自治体が生み出すものはただ一つ市民サービスのみであります。

市民サービスの質と中身こそが自治体の存在価値と言っても過言では無いのにも関わらず、サービスとしてのコスト計算はされていません。サービスを受ける側の市民は、自分たちの税金がそのサービスでどれだけ使われているのか検証するすべがありません。

臼杵市は、市民サービスのコスト計算キチンとするために、サービス形成勘定書と言うものを生み出しました。

サービス形成勘定書とは要するに損益計算書に該当するものであります。


臼杵市のバランスシート・サービス形成勘定作成便利帳によると、サービス形成勘定書とは、バランスシートに計上される資産形成以外の一年間の行政活動のコストを示したもので通常の経費に加えて退職金引当金の増加分と減価償却費を示し目的別に分類したものです。

先程述べたように施設ごとの現在の資産価値、人件費に関わるすべての経費を含めて正確なコストを明らかにしているのです。

これによって一年間の市民サービスにかかったコストがどのようなものか把握でき、さらにサービス形成勘定計算書内訳表により事業ごとのコストが具体的に明かとなるように作られています。事業形態や事業の効率化を検討するための資料となります。

また目的別事業別にサービスコストとその財源が説明されていますので、それぞれの事業に於いて財源を工夫していくための手がかりとなります。行財政改革の為にはまさしく必要な資料と考えます。


昨日第2次行財政改革大綱に基づく具体的推進項目の取り組み結果が提出されています。

その中で、83項目に渡る事業の見直しが行われ、その内容と効果額が示されていますが、発生主義に基づいた正確な事業のコスト計算とその計算式が整理・公開されていない中で、果たして本当に5年間で9億9千万の経費節減が図れたのかどうかは評価のしようがありません。取り組まれた見直し項目一つ一つが妥当な事柄であっても、全体の中で比較検討する数値的根拠を、我が狭山市は、持ち合わせていないのが現状す。

行政評価システムが現在検討されていると聞いていますが、事業のコスト計算ををキチンと取り入れた、まさしく狭山市番サービス勘定計算書に匹敵する行政コストの計算書が必要であると考えます。


3,サービスの検証と改善スパイラルの仕組みづくりについて

*ホームページでの一般公開


臼杵市では、このサービス形成勘定書を作成することによって、サービスごとのコストを正確に把握する為の資料が整理されました。

これをもとに、行政サービス一つ一つの目的・コスト・負担・成果をとりまとめていきます。

それがサービスの検証と改善のためのスパイラルシステムの基礎となります。

行政サービス検証と改善のスパイラルシステムとは、

サービスごとの評価の指標を市民と共に定め、その指標に基づいて行政自らがまづ評価を行い、それを公開し、さらに市民の側から満足度を評価していただき、さらに改善していくという仕組み作りです。

このように先に述べた、ただ一つ自治体の生み出す、サービスの量と質をより高いものへと改善していく仕組み作と、数値的に正確な評価の基準作りが、必要と考えます。

現在検討されている行政評価制度に、コストと負担を考慮して行財政改革を健全な自治体経営と市民サービスの改善と言う一貫した座標軸の中に組み込んだ仕組み作りが必要です。


さらに臼杵市では、全市にケーブルテレビ網を網羅しインターネットを使ってその情報を随時公開し市民と双方向の行政評価制度が始まっています。

狭山市に於いても、現状でも少なくとも広報やHPを活用してバランスシート、サービス形成勘定書などの公開も可能と考えますが如何でしょうか。


ここでこれらの諸表を公開することの意義について述べたいと想います。

財政再建はそろばん勘定の外にありと言う言葉があります。私は、執行部がいくら財政諸表を作成してもそれを全庁に公開し日々それを再確認できる状況を作らない限りなんの意味もないと考えます。

整理されたコスト計算を全庁と議会と市民に公開することによって初めて、共通の問題意識を持って本当の財政再建が始まるのではないでしょうか。

職員一人一人がコスト意識を持ち、私達議員も事業の必要性だけでなく常に財政運営全体の検討の中から発想し、政策を考え、何よりも市民全体からお預かりした税金をどうしたら有効に活用できるのか、生活者である市民一人一人が検討できること、そのような状況を市が保証して初めて今日の財政再建が図れると考えます。


今後のIT行政の中身として、市民に納得していただける自治体作りは、新世紀の民主主義の進化と市民社会の発展をもたらすと想います。


また、地方分権の時代にあって、補完性の原理に基づいた自治体運営を近未来の自治体の在り方と考えたとき、自立した個人と市民の生活を基礎に、自治体は、個人では、にないきれない事柄を補完する義務があるという原則に基づき、正確な市の経営状況、行政サービスの正確なコストを明示し、市民との双方向の評価の仕組みは、私達市民の社会性を育んでいくために必要不可欠と考えます。

市長に於かれましては、そのような将来展望に起って是非とも明確な指導性を発揮していただきたいと考えますが、お考えは如何でしょうか。以上で私の一回目の質問を終わります。


2回目

それぞれ前向きなご答弁ありがとうございました。2回目は要望とさせていただきます。

バランスシートにつきましては、12月には、平成元年度分にさかのぼりご報告いただき、以降来年度からは、9月決算審議に間に合わせていただけると言うことであります。大変ご苦労と思いますがよろしくお願いいたします。

しかしながら、いわゆる旧自治省方式というと、特に資産の算出に於いて、過年度の決算書より総数で拾っていくやり方と聞いています。これだけでは、施設ごとの資産価値の評価の積み上げではありませんので、当然サービス形成勘定書の数値的基礎には成りません。

臼杵市の場合も基本的には取得価格を初年度の財産評価にしていますので合計では同じになりますが、やはり施設ごとの評価をキチンと出し、減価償却分と合わせ年々評価をしています。それを行って初めて、サービスと各施設との関係、サービスの正確なコストが計算されると思います。事務行為として煩雑さがありますが、出来るだけ早く取り組んでいただきたいと思います。

それから、本日は臼杵市の事例をご紹介させていただきましたが、狭山市には狭山市のやり方があって良いと思います。特にサービス形成勘定書に該当する行政コスト計算書には、細かな部分には、どうしてもその市の独自性が出ると思います。基本を押さえた上で、出来るだけ早く内容を咀嚼し全庁の職員さんの手作りでこれらの帳票が整理されていくことが、大切なのではないでしょうか、臼杵市は担当者はたった一人で、後は民間の会計コンサルタント、そして各部局の協力の下にたったの一年で作り上げていったようです。行財政改革の為の手段ですから、これらの事業もまたコストを掛けない方法を模索して狭山市版の良いものを作り上げていっていただく事を要望いたします。以上で私の一般質問を終わります、ありがとうございました。