河川生物の生態系保護について 平成12年9月11日

平成12年第3回定例会一般質問


市内河川等に生息する魚類の生態系保護についての市としての一般的見解と取り組みについて

ブラックバス類 特に小口バスの違法放流について

駆除と啓発について


多様な生態系とふるさとの自然


私たちの住む地球上には、様々な種の生物が生息し生態系を形作っています。多様な生物生態系を保全することは、私たち人類にとってその存在基盤を保証するきわめて重要な責務と考えます。

近年その事に気づいた国際社会は、1992年6月国連環境開発会議(地球サミット)において157カ国の署名のもと「生物の多様性に関する条約」を1993年12月29日に発行いたしました。日本は18番目の締約国として生物の多様性の保全及び持続可能な利用を目的として取り組んでいるところであります。

本条約は、各国の地形的特質や気候的環境の中にあって長年培われ、自然バランスによって形成された生態系を保全し、伝統的利用をおこなうのであっても維持可能なかたちを求める内容となっております。

そのような国際世論の趨勢にあって我が国に於いても1995年、生物多様性国家戦略を閣議決定し地方自治体に於いてもその取り組みが始まったところと考えます。

私たち市民の立場から考えますと、自分たちの生活している地域の自然環境は、狭山らしい雰囲気を作り出しているもっとも重要な要素でありますし、狭山の子供達にとっても、また狭山で生まれ育った大人達にとっても心の中ではっきりと刻まれた、特別に大切なものであります。

ギューギュッギュと少々しゃがれた声でなくオナガの声やひっそりと咲く白い茶の花、川の四季もまた同じです。初夏に訪れるウグイの産卵期に各地の堰を飛び超える姿などは、一度目にすると心の中からは決して忘れることは出来ません。狭山市には狭山市らしい自然があるとおもいます。郷土の自然は狭山の子供達の教育環境としても、また私たちの日常のひとときの安らぎの為にも掛け買いのないものでありますし、古くから狭山に住まわれている方たちも、また新しく狭山に移り住まわれた方にとっても共通の財産として、分かち合えるふるさと意識の拠り所として自然を大切に残していく責務を痛切に感じるところであります。そしてそのような地域の自然と生態系を保全していくことは、地方行政の共通の課題と考えますが市長のお考えはいかがでしょうか。

すでに、狭山市では環境問題に力を注がれている町田市長の諸施策によって、自然に親しむ施設、多様な生物を保全する為の様々な取り組みがなされているところと思います。


河川の生態系について


昨年の6月議会に於きまして私は河川環境の整備、特に、河川の水系としての広域的な取り組みをお願いしたところ、町田市長は、早速関連市町村に働きかけ、特に名栗村の自然林の保護について広域的な取り組みを検討していただいていると聞いております。市長の実行力に敬意を表明させていただきます。

本議会に於いては特に河川生物の生態系の保全について、狭山市として何が出来るかお考え方をお聞かせいただきたいと思います。

とかく河川の問題となると、河川管理者である埼玉県が所轄となる部分が多いと思いますが、私は、あえて市内河川の生物多様性の保全については市町村として必要な取り組みをしていただきたいと考えますがいかがでしょうか。国の生物多様性国家戦略の趣旨も決してその事を妨げるものではないと考えます。


コクチバス移植の重大性


ところで、昨年1999年のことであります。日本の河川生態系に関する重大問題が発生いたしました。

コクチバスの違法放流の問題です。伝えられたところに寄りますと、ワカサギやサクラマスの産地で名高い福島県の檜原湖でコクチバスが大発生しているという話でありました。

そして本年2000年7月私たちの入間川においてもコクチバスが大量に捕獲されました。

私は、7月入間漁協の地引き網漁に参加したいたしました。狭山大橋上流、約300mの区間で地引き網を引いたところ、鯉約50匹についでコクチバスが約30匹と多量に捕獲されました。そしてすでにその地点では、本来多数居るはずのオイカワもウグイもフナもほとんど居ませんでした。

捕獲されたコクチバスは、すべて約25cmほどで型揃いのため、おそらく極最近何者かによって違法放流されたものと思われます。

もし、一般市民による無意識な移植であったなら、すでに近臨市で確認されている、大口バス、ブルーギルなど、他の外来種も相当数混じって良いはずでありますし、また体長も不揃いであったはずです。どうしてコクチバスだけが型揃いでこれほど大量に捕獲されたのでしょうか、この事実は、組織的な違法放流を連想させ日本の河川の生態系を様々な立場で守ろうとする人たちの愁眉の問題と同じ問題と思います。

コクチバスは日本の在来種を食べてしまう魚です。これは大変な問題です。

コクチバスは、ブラックバスをゲームフィッシングとしてはじめて日本に持ってきた人たちですら日本の生態系を破壊する危険種として移入を控えてきました。湖沼繁殖型の従来の大口バスに比べて河川繁殖型、冷水型のコクチバスは、体長50cmまで成長し在来種を補食し日本の内水面の食物連鎖を変質させます。

すでに、漁業協同組合の連合組織である全国内水面漁業協同組合連合会では、重大な危機を直感し水産庁をはじめ各方面に懸命に働きかけているところであります。

埼玉県では、本年7月3日荒川の秋が瀬でコクチバスが確認されたことに次いで狭山の報告は2例目だそうです。同じく7月付け越辺川で3例目の報告がされています。

担当の埼玉県農芸畜産課は、かかる全県的な非常事態に憂慮し対策に奔走しております。

先ほど違法放流と申し上げましたが、埼玉県は漁業調整規則第31条において、大口バス、コクチバス、ブルーギルなどの外来種の移植を禁止しております。

しかしおそらく担当課の限られた予算の中では、その事を全県民に正確に告知することもままならないと思われます。

市長、これまで、狭山市では河川生物の生態系までは、なかなか担当課を持ち、恒常的に取り組むことが出来なかったことと思いますが、事は重大であり、緊急性もあります。

本件は、たとえば一時的に汚染物質が誤って流されたと言った事件よりも生態系の将来にとって深刻な問題となりえます。環境派の生物学者の間では、「生物汚染」と言う言葉すらあります。

入間川にコクチバスを放すと言うことは、鶏舎に野犬を放すに等しい蛮行と言わざるを得ません。北米大陸で河川の食物連鎖の頂点にいるスズキ科のコクチバスが、いきなりおとなしい日本の鯉科系生態系に放たれたのです。鮎、オイカワ、ウグイ、フナや稚ゴイを食べ尽くしたコクチバスは、天敵も居ないまま川を上り、ヤマメ、イワナ、カジカをも浸食するかもしれません。

私たちのふるさとの自然を形成している固有種を絶滅させた後に、食物を失い自らの種の保全の道すらも閉ざしやがて魚の住まない川が誕生するおそれが大いに想定されます。


対策の提案


環境部長にお尋ねします。私は直ちに対策に取り組めば、まだ間に合うと想います。

その理由は、おそらく埼玉県の報告事例を併せ考えるに、7月に報告が集中している事から、違法移植は、極最近おこなわれたものと考えるからです。

6月繁殖期を迎えるコクチバスは、初年度は安定的な繁殖を行えていないとすれば、その絶対数を出来るだけ減らすことによって入間川への定着をくい止める事が出来るのではないかと思うのです。

来年以降第2世代が誕生してからでは、問題はより複雑化するでしょう。出来れば、本年度中、遅くとも来年度初頭までに近隣市と協動で捕獲すれば、移植初代のコクチバスを相当数確保できると思います。

さらに、釣り人には、捕獲後の持ち帰りを呼びかけ、ブラックバス釣り特有のキャッチ&リリースの習慣は、入間川に於いては県の漁業調整規則上違法行為であることを明確にし、生態系保全に協力を呼びかければバス釣り目的の釣り人達であっても事の重大性をきちんと認識して協力をいただけると思います。

大切なことは、この問題の啓発です。広報さやまや、河川区域内に看板を作り、是非とも生態系保護のために、コクチバスの駆除を呼びかけていただきたいと思います。


次に、青少年への教育です。

ここで、教育長にお尋ねいたします。

市内の小中学校に於いてはすでに、郷土の自然の大切さや生態系の保全について十分な教育がなされてきたことと思いますが、ことコクチバスの問題について、今こそ十分な指導お願いたします。これまでの取り組みと併せて、ご答弁いただきたいと思います。

そして、出来れば、環境教育の一環として、また、ふるさとの自然と生態系を直接保護し自然のなかで、人為の功罪を学ぶ実践学習の最良の機会として入間川周辺の小中学校で河川の生態系調査を、漁協のコクチバス駆除事業と協同でおこなっていただきたいのですがいかがでしょうか。

本来であれば、学校教育としての生態系調査と言っても網を使った漁は、県の許可がなかなか下りません。しかし漁協によるコクチバスの駆除事業と協動でおこなうのであれば県としても今なら問題なく許可するそうです。入間漁協と是非とも協議していただきたいと考えますがいかがでしょうか。

以上長きにわたりましたが、コクチバスの問題は、重大かつ緊急の問題です。対策が遅れれば遅れるほど事態は幾何級数的に悪化し、早ければ早いほど絶大なる効果が期待できます。出来るだけ早い段階での全庁的な取り組みを節にお願い申し上げます。