新しい河川政策について 平成11年6月10日

平成11年第2回定例会一般質問

新しい河川政策について

最後に河川環境の整備とこれからの河川政策についお訪ねします。

ふるさとの山河、ふるさとに自然は私たちや私たちの子供たちにとって人間形成のうえでとても大切な要素であると考えます。市長は以前より一貫して、狭山 市の中心を流れる入間川の環境整備に力をそそぎ、セーヌ川構想をかかげて、市民の憩いの場所としての河川の活用を唱えていらっしゃいます。

平成8年に策定された第2次狭山市総合振興計画の後期基本計画や平成10年に策定された、狭山市環境基本計画に置いても河川環境を総合的にとらえ親水空間 の一層の向上と水質の改善を唱い、さらに河川及び河川敷周辺の希少生物の保護にふれ、改善の必要性を呼びかけ、実施されている事と思います。

本年3月に作成された「統計狭山」によりますと、ここ3年間で入間川と不老川の水質が劇的に向上している事が数値として明らかにされています。市長をはじめ市職員の皆様と参画されている市民団体のご努力のたまものとして心から敬意を表したいと思います。

一方で、本年度版の「狭山市民意識調査」によりますと、満足度・重要度の相関図に置いて明らかなように、河川環境の改善が現時点に置いても全市民にとって 普遍的関心事であることを読みとることができます。 ぜひとも市長に置かれましては、環境基準値達成にとどまることなくさらなる取り組みをお願いしたいと 思いますが、市長のお考えはいかがですか。

さて私はかねてより、日本の河川政策は転換期にきていると考えております。「治水の理念」を柱とした建設省による河川政策は、全国に標準化した同じ顔つき のつまらない護岸と景観を生み出し また都市化と開発を至上とした「利水の理念」は、自然環境としての河川をないがしろにしてしまい、随所で水無しの川を 登場させてしまいました。一般に川の水量が減少すると、一定量存在する生活雑排水の濃度が上がり河川の水質は劇的に悪化します。そしてそれは一時的なもの であったとしても河川周辺の生態系にとっては命取りに成りかねません。

そして、このことはすでに他人事ではなく入間川の川の水に於いても同様の状況が現れています。 平成8年には狭山市内の入間川の水が枯れてしまい、また昨 年の秋には、台風による異常増水のあと急激な水量の減少によって河川敷が腐り入間川周辺地域で大量の蠅が発生するなどの状況が観測されています。

現在のまま、上流部の開発が無計画に成されて行くとしたら、狭山市など中流部では平時の乾燥化と大雨時の洪水の危険性とを繰り返し、とても「市民の憩いの 場」といえる状態ではなくなってしまいます。またこの問題は貴重な自然を大切に育み、観光資源として河川や森林を活用している上流部の自治体にとっても利 することはなく、一市町村だけの問題ではない共通の課題として取り組める環境も整いつつあると思いま。

このような今こそ、日本の河川政策の中で森林を守り河川環境を育む「保水の理念」に立脚した法的措置が問われていると考えます。 一方で、建設省も国民の 新たなニーズに応えようと景観重視の護岸造りなど新しい施策も模索していますが、一河川流域全体を「保水の理念」でとらまえた法律はなく、それを国政レベ ルで一気に変えていく事も難しい現実があると思われます。

私はこの問題は、地方自治、広域行政と市町村合併の時代の趨勢のなかでとらまえていく必要があると考えます。 名栗村から川越市に至る入間川流域の4市1 村の共通、共同の課題として流域協議会などあらゆる機会を通じ狭山市長として呼びかけて頂き、ぜひとも「入間川を日本一きれいな川にしよう」を合い言葉 に、4市1村が足並みをそろえて、入間川をステージに日本の新しい河川政策の先鞭を付けていただきたいと思います。

川は、私たちのふるさと意識の基本であります。美しい川、美しい水、豊かな流れ、楽しい思いでづくりは流域住民の普遍的権利であり、長年の間に置き去りに された河川の復権のために、市長の河川政策のなかに「保水の理念」を加え他市町村と協同で取り組まれることを要望いたしますが、市長のお考えはいかがです か